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シリーズコラム「見えないものに価値がある」

楽しい時間をありがとう

2011-09-23

「いい夫婦の日」というのをご存じだろうか。語呂合わせの11月22日だ。

目黒雅叙園にも「夫婦の日」というものがある。こちらは毎月22日。

園内のレストランで事前予約をしてコース料理やブッフェを夫婦ふたりで食べると、

料金が半額になるというお得な限定サービスだ。

 

さて、その「夫婦の日」に中国料理「旬遊紀」を白髪のご夫婦が訪れた。

接客したサービススタッフのFさんが、前菜、フカヒレスープ、海老の塩炒め、

北京ダックと料理を運ぶ。

 

ところが、一品ごとに、少しずつ料理を残されてしまった。

厨房の料理人は皿が下がってくると、食べ残した料理が気になる。

「お口に合わないのかな」と。

 

何品目かで奥様がこうおっしゃった。

「歳をとると、だんだんと食が細くなってしまって。でも、2人とも美味しいものを

いろいろ食べたいという気持ちは変わらなくて、ここへお邪魔するのよ」

 

Fさんは嬉しくなった。

作ってくれた料理人、そして応対してくれるFさんに対する気遣いから、

さりげなく「お腹がいっぱいになるので、少しずつ残してごめんなさい」

という気持ちを伝えてくださったのだった。

 

「気になさらないでくださいね」と答えると、

「だんだんと世代は代わっていきます。私たちも周りの人たちを

楽しませるように働いてきました。でも、年老いてしまって…。

今度はあなたたち若い方が端(はた)を楽にさせる気持ちで働いてね」

とおっしゃった。

 

Fさんは大阪の親元から離れて働いている。

そんな両親の代わりに、温かい言葉をもらったような気がした。

帰りぎわにその奥様から、「楽しい時間をありがとう」と、

手作りの携帯ストラップをプレゼントされた。

 

お客様に尽くすつもりで働いている。でも、お客様から学ぶことも多い。

それは若く未熟な自分に対しての「親ごころ」だと思っているという。

 

「親ごころ」。見えないものに価値がある。