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シリーズコラム「見えないものに価値がある」

しゃしんの おじさんへ

2011-06-18

目黒雅叙園には、結婚式の他、入学式、還暦、金婚式など記念日を写真に残す

アニバーサリーフォトプランというものがある。

園内の滝や野立て傘、らせん階段など「絵になる」スポットをバックに写真を撮る。

 

ある日、二十歳と七歳の姉妹が、成人式と七五三の記念写真を撮るため、家族と一緒に訪れた。

担当をしたのは専属カメラマンのKさんとHさん。

2人は、特に七歳の女の子のことが気がかりだったという。

何しろ着付とメイクだけでも一時間半はかかってしまう。

2人同時ということもあり、撮影は1日にも及ぶ。

大人でさえも疲れてしまう。とにかく、飽きさせないようにと気を遣った。

 

螺鈿細工の壁の前では、「このキラキラするのは何だと思う?」とクイズを出す。

「貝殻の内側を貼り付けたものなんだよ」と言うと、目を輝かせて食い入るように見る。

その瞬間をパチリッ!

ガーデンチャペルの前では、「ガラスに顔が映ってるね」と話しかけると、鏡のようにして覗き込む。

その瞬間をパシャ!

写真を撮ろうとするのではない。目黒雅叙園をテーマパークに見立てて一日遊んでもらう。

 

カメラマンの一番の仕事は、「撮る」ことはもちろん、「本人に楽しんでもらう」ことが大切なんだろう。

しかし、言うは易し行うは難し…「何か他にもコツがあるんじゃないですか」と尋ねると、

Kさんはこんなことを話してくれた。

「実は私、中学2年の男の子を頭に、二歳の女の子まで5人の子持ちなんですよ。

私は本当に子供が好きだから、ついつい一生懸命になってしまう。

その気持ちが自然と伝わってしまうのでしょうね」と照れ笑いされた。

 

後日、その七歳の子から手紙が届いた。

「しゃしんの おじさんへ。しゃしんをとってくれてありがとうございます。ほんとうにたのしかったよ」。

ペンギンとゾウさんのかわいい便箋で。

 

「一生懸命な気持ち」。見えないものに価値がある。