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シリーズコラム「見えないものに価値がある」

「憧れのウエディングドレス」

2010-01-13

目黒雅叙園には、「アニバーサリーフォトプラン」なるものがある。 そのまま訳せば、「記念日写真企画」。 夫婦にとって、家族にとっての特別な日の記念に、写真を撮って残してもらおうというもの。 スタジオの中だけでなく、希望によっては、百段階段や中庭の滝をバックに撮ることもできる。 あるご夫婦が、金婚式を迎えた。 奥さんには、ずっと長い間、心残りにしていることがあった。 それは、結婚式の披露宴で、ウエディングドレスを着ることができなかったということだった。 もちろん、文金高島田で白無垢の和装をまとい、多くの人たちに祝福されて結婚した。 その後も、さまざまな苦労がありはしたが、夫婦で乗り越えて幸せな人生を歩んで来た。 でも…。少女の頃にスクリーンで観たハリウッド女優の、ため息の出るほど 美しいウエディングドレスが瞼に焼き付いていて忘れることができなかったという。 その、50年間の「憧れ」を実現するために、 金婚式の記念にアニバーサリーフォトプランに申し込まれたのだった。   ふと、今年還暦を迎える従姉のことを思い出した。 「やっちゃん(筆者のこと)、見て見て」と彼女が言う。 おばさん仲間で、京都の祇園へ旅行に出掛けた。 そこで、舞妓さん姿に変身する体験をした。 その時の写真を「見て見て」と言うのだ。 仕方なく、ちょっと怖いものでも見るような覚悟でキャビネサイズの写真を覗いた。 ところが…だ。 驚いた。 あまりにも美しい。 そこには、時を遡って少女に還った従姉がいた。 一緒に遊んでもらった「あの頃」の顔があった。 weding.jpg さて、先のご夫婦の話。 揃って洋装を身にまとい写真に納まった。 奥さんのウエディングドレス姿に、ご主人は感嘆の声を上げたという。 「憧れ」。見えないものに価値がある。
「雅」Vol.30 掲載